腸管バリア機能

腸内環境Topics

免疫の最前線「腸管バリア」

近年、腸内環境の研究分野において、「腸管バリア」という機能に注目が集まっています。腸管バリア機能が破綻すると、腸から細菌や毒素などの異物が体内に入り込み、血流を介して体内組織にも影響を与えてしまいます。その結果、腸管のみならず全身性の炎症にもつながるため、様々な疾患の原因になることが報告されています[1]


そのため、腸管バリア機能を高めることが健康維持において重要であり、また、腸管バリア機能は乳酸菌などのプロバイオティクス[2]や食物繊維などのプレバイオティクス[3]によって増強されるという研究報告もあります。

腸管バリア機能が破綻するメカニズム[4]

①細菌や、グルテンの分解物であるグリアジンが腸管上皮細胞に結合します。
②細胞内にシグナルが送られゾヌリンというタンパク質が過剰に分泌されます。
③分泌されたゾヌリンが腸管上皮細胞に改めて結合することで、タイトジャンクション(※1)を形成しているタンパク質同士の結合が弱まります。
④その結果細菌や毒素などの異物が体内に漏出し、血流を介して全身にめぐることで腸や全身で炎症を引き起こします。

※1 腸管の細胞間の隙間をファスナーのように閉じることで形成されるバリアのこと。腸管上皮細胞においてこの機能が正常に働かないと、細胞の間に隙間が空いてしまい、粘膜内に細菌や毒素などが入り込むことで多くの疾患の原因になる。

【参考文献】

[1] Ghosh et al. Intestinal Barrier Dysfunction, LPS Translocation, and Disease Development. Journal of the Endocrine Society. 2020; 4(2).doi: 10.1210/jendso/bvz039

[2] Chaiyasuit et al. Probiotics Supplementation Improves Intestinal Permeability, Obesity Index and Metabolic Biomarkers in Elderly Thai Subjects: A Randomized Controlled Trial. foods. 2022; 11(3); 268.doi:10.3390/foods11030268

[3] Krawczyk et al. Gut Permeability Might be Improved by Dietary Fiber in Individuals with Nonalcoholic Fatty Liver Disease (NAFLD) Undergoing Weight Reduction. nutrients. 2018; 10(11): 1793.doi:10.3390/nu10111793

[4] Heickman et al. Zonulin as a potential putative biomarker of risk for shared type 1 diabetes and celiac disease autoimmunity. Diabetes Metab Res Rev. 2020; e3309.doi: 10.1002/dmrr.3309